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ちょうきゅうざん えいしょうじ長久山 永稱寺

美しく整えられた庭の草花や、梅や銀杏などの木々が美しく、清々しい空気に包まれる永稱寺。境内を歩いていると、上野駅から車で5分という都会にいることを忘れてしまうほどだ。
このお寺の歴史は古く、ルーツは鎌倉時代にまで遡るという。その長い歴史のなかで時の仏師や絵師と深いつながりがあり、今もさまざまな作品が収められ、その一部は区の重要文化財になっているという。
こうした重厚な歴史のあるお寺である一方で、第二十五代住職 和久照隆氏の語りは、決して堅苦しいところがなく軽やかだ。「私が幼少から大切にしているのは、“楽しく、仲良く、元気良く”なんですよ」と朗らかに笑う住職の様子から、永稱寺に漂う清々しさ、心地よさの理由の一端に触れたような気がする。多くの人が、このお寺の歴史や御堂の美しさだけでなく、漂う空気や住職の人柄に惹かれ、このお寺にやってくるのだろう。

歴史

永稱寺の開基である和久定念氏は、元は佐竹藩の城主の刀持ちだったと言われる。貞応元(1222)年、親鸞聖人が弟子である信願房定信師とともに現在の栃木県那須郡馬頭町で説法をした際に、ご聴聞する機会を得て出家。定念という法名を得て、馬頭町で永稱寺を開創したのが始まりとされる。
その後、第十代目の廣運氏が寛永年間(1624〜1643年)に江戸に移り、さらに延享4(1747)年に第17代目圓隆によって現在の地に永稱寺が建立された。御本尊の阿弥陀如来立像は、天慶年間(942〜1017年)の平安中期に恵心僧都源信和尚の作であることが、『新編 武蔵風土記』の金杉村永稱寺の条にて記されている。

永稱寺には、一頃さまざまな絵師や彫師が身を寄せていた。1700〜1800年代に活躍した絵師、酒井抱一氏、大窪詩仏氏、谷文晁氏もそのひとり。酒井抱一氏による梅図、大窪詩仏氏による竹図、谷文晁氏による松図が今に受け継がれている。「歳寒三友図」と呼ばれるこれら三種の墨画が揃う例は全国でも稀で、台東区有名文化財にも指定されている。

また、本堂正面左右の襖は、永稱寺門裏に居を構えていたこともあるという明治の洋画家 中村不折氏によるもの。中村不折氏による水墨画の大作は大変珍しいとされ、見事な筆致の水墨画を見ようと本堂を訪れる人もいるという。そのほか、透かし彫りの欄間や、酒井抱一氏による聯(書画の板)、俳書など多くの品々から、永稱寺が長い歴史の中で、つねに街とともにあったこと、多くの人に愛されてきたことを、感じることができる。

住職インタビュー

■「楽しく、仲良く、元気よく」

私が日々意識しているのは、「楽しく、仲良く、元気よく」ということです。誰に教わったわけではありませんが、子どもの頃からそのように考えていました。やはり、人と人が関わるところや、家族の間には、笑いがあって明るいほうがいい。そういう場に人は寄ってくるものです。永稱寺も法要やイベントなど、皆さんが集いたくなる明るい場をつくれたらと思っています。

仏教には一般に難しく感じる話も多いです。そうした仏教の専門的なお話は、「法話会」などに来ていただいた先生方にお任せし、私自身はそういう難しい言葉なしに、皆さんと会話するようにしています。

ときには、悩みごとを抱えてこちらにいらっしゃる方もおられます。ずいぶん以前のことですが、若い男性がお墓の前で大変辛そうな顔をされていたことがありました。お話を聞くと、「僕はおばあちゃん子だったのですが、おばあちゃんが亡くなってしまった」と言うのです。「でもお祖母様は仏様になったんだろう?」と聞くと、うんと頷いて「でも、おばあちゃんに会いたいし、声が聞きたい」と、膝を抱えて涙ぐんでらっしゃいます。そこで私は「ビール瓶を見たことがあるか?」と聞きました。「ビール瓶は正面から見るとラベルが貼ってある。後面からは、そのラベルは見ることができないと思うだろう? でも、よく目を凝らすと、後ろからでもうっすらとラベルの文字は読めるんだよ。何事も漠然と一方向から見るのではなくて、いろんな方向から見てみると、目の前がずいぶん変わってくる。今まで気づかなかったことが見えてくるよ」と伝えました。そんな話をするうちに男性は笑い始め、少し落ち着いた様子で帰っていきました。それから10年〜15年ほど経ったころ、この男性が「ご住職、覚えてらっしゃいますか?」と、私を訪ねてきてくれました。当時したのは、普通の言葉での会話でした。しかし、こうした言葉だからこそ伝わる思いがあるのかもしれません。

■100年先も御門徒が集まるお寺に

私は、37歳で住職になってから今まで、ずっとお寺の修繕・改修ばかりをしてきたような気がします。墓地、お堂など建物すべて、鐘つき堂の補修修復などを続けてきて、ようやく落ち着いたところです。

歴史のあるお寺ですから、私が住職になった頃には、床下を白蟻に食べられているなど、建物はかなり傷んでいる状態でした。また墓地は、水はけが悪く雨が降ると水が溜まり、お墓の通路が狭く、車椅子の方やお年寄りにはお参りが難しい状態でした。それらを修繕し、お墓の前まで手を合わせに行けるよう改修しました。

前住職の父は、どちらかというと歴史あるものには手を触れず、できるだけそのままにという思いがあったようです。しかし、100年先も門徒の皆様が集まってくださるお寺であってほしいと考えると、古いものを大切にしながらも、時代の流れにあわせて新しいものを取り入れていれていかなくてはなりません。これも阿弥陀様からいただいたお役目と思い、一つひとつ取り組んできました。私は、元来「みんなで集う」というのが好きなんですね。ぜひ新しい御門徒さんにお越しいただきたいですし、私の代のあとも、御門徒の皆さんにとって心の拠り所のような場所になればと思いますね。

葬儀、法事・法要

「葬儀のことはご経験がなく、わからないことも多いと思います。ご自身で一生懸命調べてくださる方もいらっしゃいますが、聞いていただくのが一番です。どんなことでも、気軽に尋ねてください」とご住職。

本堂には、30〜40人入ることができ、ご遺族、ご家族の控室もある。

お墓

一般墓、納骨堂、合同墓があります。
永代使用や生前申し込み、個人申込なども承っています。
※ご門徒(護持講)の方のみ納骨させて頂きますので一度ご相談ください。

イベント情報

常例法話会(毎月21日 14時より)

毎月、法話をしてくださる先生を招いて法話会を行っています。
その他、4月の永代経(花まつり)や3月9月の彼岸会、10月の報恩講などの年中行事を行っています。
※新型コロナウィルスの流行など、状況を見ながらの開催となります。

寺院情報

寺名(ふりがな) 長久山 永稱寺 (ちょうきゅうざん えいしょうじ)
住職 和久 照隆 (わく しょうりゅう)
郵便番号 110-0003
住所 東京都台東区根岸3-12-44
電話番号 03-3876-2414
FAX番号 03-3876-5259
E-Mail eishoji@fancy.ocn.ne.jp
交通

日比谷線「入谷駅」、JR「鶯谷駅」徒歩7分

駐車場 4~5台
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