文字サイズ

  • 普通
  • 大きく

りゅうすいざん あんらくじ龍水山 安楽寺

山梨県大月市にある龍水山安楽寺の南側には山の中腹に富士五湖の河口湖の水を利用した駒橋水力発電所がある。また寺の北側には中央高速道路が走り、富士山を水源とする桂川の流れや甲州街道と中央線が折り重なるように走っている里山の景色が広がっている。

安楽寺がある強瀬(こわぜ)という地区は150世帯ほどの集落なのだが、安楽寺のほかに、曹洞宗の寺院もある。狭い地域に2つの寺院があることは珍しい。「ご門徒さんは強瀬地区の他、川隣、下和田、大島などの少々離れた地区にも点在しているんです。」と語るのは住職の内藤弘行氏だ。そのため行事運営の際なども、高齢化によりなかなか寺に集まれない事や、後継者不在などの難しい問題もあるという。

歴史

1501(文亀元)年、初代住職である勝真(しょうしん)が開山したと伝えられている。江戸時代の末期、1860(万延元)年3月2日夜半に、強瀬村の大半が焼失する大火があった。強風で火は風にあおられてすぐに燃え広がり、安楽寺も焼失したという。「昔の屋根はわらや、かやでしたので、一旦火災が発生すると火はまたたく間に広がったようです。本堂・庫裏はもちろんのこと、御本尊や仏具・古文書なども全て燃え、現在残っているものは大火以降に再建されたものです。」と住職は話してくれた。

焼失する以前は、安楽寺は村の寺子屋として子どもたちが一生懸命に勉強する場でもあり、村民の交流に欠かせない場所でもあった。村の財産が燃え尽きただけではなく、地域の拠りどころとするコミュニティの場所もなくなってしまい、その損失は精神的な面も含めて非常に大きなものだったのではないだろうか。
その後、焼失から十数年後、明治初期にご門徒や地域の方のご協力のもと、本堂と庫裏も再建された。

住職インタビュー

■通勤電車の中での大切なご縁

先代住職である父も公務員をしながら住職をしていましたが、私も私立大学の職員をしながら、住職をしていました。令和4年3月末に大学を退職してようやく43年間の兼職から解放され、専任の住職になりました。住職になったといっても、毎日草取りと掃除ばかりですが(笑)。

兼任していた間は、寺の仕事はできるだけ土曜、日曜に何とか予定をやりくりして対応していました。大学の仕事と寺で大変忙しくはありましたが、いろいろなことに興味を持って行動し、趣味のスキーに行く時間もなんとか作っていました。大晦日に除夜会を行い、正月は年始回り、年始のご挨拶が終わった日の深夜に長野のスキー場に飛んで行って、1日滑ってその日の夜、家に帰ってきて、翌日からまた大学に出勤というようなハードな年始を毎年過ごしていました。昔からの仲間たちと、今も趣味のスキーを続けられていますので、お陰様で心身ともに健康でいられます。寺に生まれていなかったら、違う世界でアクティブな人生を歩んでいたかもしれませんね。

何度か僧侶とは別の職業に就く選択肢を模索したこともありましたが、父が元気なうちに寺のことを吸収しておかなければ…、と一念発起して住職を継ぐ決断をしました。その後住職を継職してから早20年以上になります。

大学への通勤は、寺のある大月から大学のある東京・三鷹まで、片道1時間40分ぐらいかかりました。「やってできないことはない」と思って始めた遠距離通勤でしたが、昔は今より通勤電車の本数も少なく、乗り換えもありましたので大変でした。近年は大月から東京駅までの直通電車もできて、電車の本数も増えたので、三鷹まで快適に行けるようになりました。

電車で過ごす80分は、本も読めますし、いろんなことを考えるにもいい時間です。また、毎日同じ車両に乗ってくる人たちとは、自然に顔見知りになります。「今日はあの人がいないな、最近どうしたのかな」と、気遣ったり心配したりされたりして、電車の中だけの人間関係ができていました。あるときボックス席で、新聞紙が4人のひざの上に広げられました。私は何なのかなと思っていると、何と冬の寒さをしのぐ「簡易こたつ」でした。またある時は、居眠りをしていると隣りの人が起こしてくれたりと、知らぬ間にご縁や触れ合いが生まれていました。

 

■人々と寺の縁は薄くなっています

こんな風に、以前は会話はなくても、知らない者同士でもいい人間関係があり、もっとそろぞれが思いやる気持ちを伝える機会がたくさんあったような気がします。今は職場で席が隣になってもメールで会話をしたり、逆に人間を区別、差別する意識がどんどん成長しているような気がします。

葬儀も、近親者だけ(少人数)でとり行なう「家族葬」や、宗教色をなくして行なう「無宗教葬(自由葬)」が増え、人と人との縁はだんだん薄くなっています。また、人との関わりあいもどんどん狭くなっているような気がしていて、近い将来、人と人のお付き合いがほとんどない世の中になるかもしれません。人との付き合いがないという人やできない人も増え、寺との関係を持たない方も増えると思います。

この地域も、山間部の限界集落的な場所ですので、若い世代の定着率が悪いです。地元に残って頑張るよりも、都会に職を求め、職場近くに引っ越し、マイホームを買う、先細りのコミュニティになっていくかもしれません。これからについての解決策はまだ見つかっていませんが、突破口のヒントは必ずどこかにあるので、そのために何かができるはずだと考えています。

 

葬儀・法事・法要

葬儀は葬儀場のセレモニーホールで実施可能。
以前は、お寺でも行っていたが、現在は行っていない。

お墓

他宗教・他宗派の方の受け入れは不可。これまで他宗教であった方が、今後、浄土真宗の教義と、そのご縁を尊重していただけるという前提での受け入れは可。

お墓の引っ越し相談は随時行っている。

イベント情報

壮年会、婦人会の活動(随時)

壮年層を中心として、壮年会、婦人会の活動を行なっています。仏具のお磨きや除夜会の実施などのお寺行事のお手伝いなど。参拝旅行は1年に1回、継続的に行なっています。

寺院情報

寺名(ふりがな) 龍水山 安楽寺 (りゅうすいざん あんらくじ)
住職 内藤 弘行(ないとう ひろゆき)
郵便番号 401-0004
住所 山梨県大月市賑岡町強瀬790
電話番号 0554-23-0293
交通

【電車】
JR「猿橋」駅より徒歩17分
JR「大月」駅から徒歩24分

【車】
大月インターから7~8分

駐車場 20台
地図