■ご縁を、思いを……「つなぐ」ことをテーマに
慶念寺のご本尊は、開所の際に、長崎県雲仙市愛野町にある光西寺(こうさいじ)様からお迎えしたものです。本来この大きさのご本尊は、もっと天井が高い場所が適しているんです。ですがひと目で「ああ、ここはお寺なんだ」と分かるような、大きなご本尊をご安置したいという私の思いから、お迎えしました。由来ははっきりしていませんが、江戸後期から明治初期に造られたものだそうで、100年以上にわたって多くの方々にお参りをされてきたご本尊です。
礼盤一式をはじめ御荘厳もほとんどが、他のお寺で新調のため不要になったものなどをいただいています。お寺は新しいですが、これらはみな、誰かが大切にしていたであろう思いの詰まったものですから、その思いを今に「つなぐ」ことができて嬉しいですね。
このあたりはご実家から離れてお住まいの方も多い土地柄です。例えば「実家のお寺を大切にしたいんだけれど、今こちらで遠方住まいだから」というような方のご法事の相談を受けた時には、必ず私がそのお寺様にご挨拶をして、そちらのお寺様の思いを伺い、その思いをしっかりとつないでいくように心がけています。都市開教というと、新しくご縁を作っていくことを考えがちですが、こちらにお住まいの門徒様と地方のお寺様をつなぐ橋渡しのような役目も、都市開教の大事な役割かなと最近は思っていますね。そういう意味でも「つなぐ」を大事なテーマと思って活動しています。
■都市開教は日々、試行錯誤
毎月「寺報」を発行しているのですが、そこに「ぜひ慶念寺にお手紙をください」と書いています。近況、ご相談など、なんでも構わないんです。私か坊守が必ずお返事を書きます。電話でもお話はできますが、手紙をもらう機会は少なくなっていますから、いいものですよね。お手紙をくださる方もだんだん増えてきて、嬉しく思っています。
お寺でこれからやってみたいこともたくさんあります。写経会、お経を読む会、また私は「笙(しょう)」の演奏ができるので、雅楽の会などもいつか実現したいですね。コロナ禍でまだ難しいことも多いですが、できることからやろうと、2020年の9月からブログを始めています。ほとんど毎日更新中です。ホームページも全部私の自作なので、ぜひ見てほしいです。少しでもお寺を身近に感じていただけるよう、日々試行錯誤しながら活動しています。
都市開教は大変なこともありますが、魅力もあります。何もなかったところ、つまりゼロから作っているので、だんだん形になっていく面白さだと思っています。いろいろなご縁があって、うちに連絡をくださる方がひとり増え、ふたり増え……「数字」としてその手応えがわかるだけでも面白いと感じています。ご縁をいただいた方はたくさんいらっしゃいますから、これからもそのご縁を大切にしていきたいですね。