文字サイズ

  • 普通
  • 大きく

ようしょうざん じこうじ遥照山 慈光寺

板橋区の住宅街にある慈光寺。「お寺は地域の人が気楽に入って来られるような場所であるべき」と語る住職の田原澄真氏は、年間を通して数多くのイベントを開催し、大人から子供まで様々な人々が集まる機会を作っている。特に、6月に行われる「お寺のお祭り~テラ∞メーラ」や8月の「お寺の夏休み一泊子ども会」などは、多くの人が心待ちにしている。

歴史

開放的な雰囲気を持つ慈光寺の歴史を知るには、初代住職・田原健三氏・一恵(いちえ)氏夫妻にまつわる挿話が欠かせない。
先にこの地に立ったのは一恵氏。明治39(1906)年に山口県で生まれ、大正10(1921)年に東京に移り住む。当時は裁縫の技術を学ぶために上京したが、大正12(1923)年に関東大震災を経験。一面焼け野原になった街の光景と、そこで苦しみ涙を流す人々の姿を目の当たりにし、仏道に帰依することを決意。昭和8(1933)年に京都の中央仏教学院に入学し、仏教を学んだ。
現在の慈光寺の場所にやってきたのは昭和14(1939)年で、本堂もない30坪ほどの平屋に居を構える。門徒が一軒もいなかったため、布教をして本堂を建てるための準備に汗を流した。健三氏と結婚したのもその頃だ。ふたりは全国を巡り歩き、布教をして回った。当時は女性僧侶は珍しく、さらに夫婦でとなると稀有な存在で、「東京の田原夫妻」と言えば少し名の知れた存在だったという。
ふたりの努力が実って本堂の建設に入るが、あと一歩で完成というところで火事に遭い、10年がかりで作ってきた本堂は焼失。幸いにもすぐさま再建工事に移ることができ、昭和42(1967)年、無事に完成した。現住職の澄真氏は「ふたりは色々な経験をして、とても苦労したからこそ、話に深味があって面白かった。そこに人が集まっていたのだと思います」と、語る。
現在、慈光寺で行われている行事や取り組みは、健三氏の思いが脈々と伝わっている。例えば60年前に発団したボーイスカウトは、戦争で荒廃した街で生活する子どもたちを不憫に思い「楽しい思いをして、元気に育ってほしい」と願って始めたという。4月に行われる「花まつり子ども会」も、40年以上続く恒例行事だ。

本堂もなにもないところから自分たちの足で全国を布教して巡り、苦難も乗り越えてきた健三氏と一恵氏だったからこそ、人々の心をつかみ、近隣住民に開けた今の慈光寺の礎を築くことができたのかもしれない。

住職インタビュー

【住職】田原澄真氏
お寺は、法事や葬儀などのタイミングで訪れる場所だと思う方が多いのではないでしょうか。しかし、本来は同じ町の中にあって、門が開いているのだから、特別な時でなくとも、気安く入ってきていい場所なのです。大層な理由がなくても、些細な世間話程度でも構いません。どんな用であれ、訪れてくれた一人ひとりを大事にすること。それが、私たち僧侶が一番考えなければならないことなのです。
だからといって、すぐに「じゃあ、お寺へ行ってみよう」という気持ちになる人はあまりいないと思います。私たちの方でもきっかけを作るための工夫が必要なのです。例えば、うちでは一年を通して様々な行事を行っています。先代住職の時代から催されているものもあれば、最近になって始めたものもありますが、共通しているのは人のご縁が繋がったからできたものだということです。色々な行事を行っていると、時には人が集まらないことや、メンバーが減ってしまうこともあります。しかし、大事なのは続けていくこと。たとえ参加者が一人であっても、その人のためにきちんと開催する。それを続けて繋がった縁によって輪が広がり、参加者が増えたり、新しいイベントをしたいと言う人が出てきたりするのです。
他にも、法要の案内状を手書きで書くのですが、そこに赤いペンで「ばあちゃん、元気にしてる?」といったような一言を書くんです。たった一通の案内状でも心を込めたものにしないといけないと思います。
小さな心配りときっかけ作りを続けていくことで、お寺に訪れてもらう機会が増え、そこで初めて、私たちが本当に伝えたいことをお話しできるものだと考えています。いつでも顔を見せに来てもらえるお寺であるために、私は今後も笑顔を絶やさず、皆さんと触れ合っていこうと思います。

副住職インタビュー

【副住職】田原哲氏
私はこのお寺に養子として入ったのですが、住職のコミュニケーションスキルの高さにはいつも驚かされています。例えば、悩みや不安を抱えてお寺にいらっしゃる方には握手をしたり、ハグをしたり、できる限りスキンシップをとられていて、それによって相談に来られた方はとても安心した表情で帰って行かれます。
お寺と聞くと閉ざされた空間で、私たち僧侶も特別な存在だと思う人が多いようです。でも、私自身は野球が大好きで、地域の仲間とチームを組んで試合をすることもあります。実際はやっているお仕事が違うだけで、同じ人間なのです。美味しいものを食べれば幸せだし、好きなことをしていれば楽しい。私も住職の考えと同じく、近隣の方との距離が近い、開けたお寺でありたいと思います。特に、子どもたちにとっては成長の過程で心に残るような存在のお寺でありたいですね。

葬儀・法要

澄真氏は葬儀について、「それを行う意味を知ってもらいたい」と言う。今、多くの人が経本を持っておらず、お経を読めないのは当たり前。そのため、故人の家族や参列者には、まず読み方を知ってもらうようにしている。「葬儀では、遺族や参列している皆さんが主役です。在りし日の故人に思いを馳せ、しっかり声に出して全員で読経します。私たちは、そのためのお手伝いをしている。故人を通して仏縁を結んでいただきたい」と語る。
現在は、斎場で行うことが多いが、お寺での式はもちろん、故人の自宅へ赴く場合もある。範囲としては、東京都一円。

イベント情報

年間行事(1月~12月)

年間行事は、こちらをご覧ください。→年間行事予定表

花まつり(4月第1日曜)

お釈迦様のお誕生をお祝いする。プロのマジシャンのショーやボーイスカウトによるゲーム等のお楽しみがある。

お寺の夏休み一泊子ども会(8月下旬)

幼稚園年長から中学生までが参加可能。ここ数年は募集に対して応募が上回るほどの人気で、2018年には60名もの子どもが集まったという。本堂や境内でみんなでカレーを食べたり、ゲームをしたり、銭湯に入った後には花火やスイカ割りをしたりなど、夏の思い出が盛りだくさん。父兄からも好評で、毎年応募を欠かさない家族もいる。

成道会(こども会)(12月第1日曜)

お釈迦さまがお悟りをお開きになられたことをお祝いする。松ぼっくりの飾りやろうそく作りなどのワークショップやボーイスカウトの出し物がある。

お寺のお祭り~テラ∞メーラ(6月第1日曜(不定期))

平成26(2014)年から毎年開催している。本堂を会場にしライブを披露する。インドの民族楽器・シタールの奏者をしている哲氏の友人が提案したことがきっかけで始まった。内陣もしっかりデコレーションし、シタールの他にもギター演奏など多彩なステージが楽しめるほか、マルシェも開催。食事やスイーツ、コーヒー、お酒などの飲食ブースに加え、ヨガやマッサージなど、境内や大広間を余すことなく使って様々な店を出している。板橋以外から訪れる人も多く、これをきっかけに寺でのイベント開催に興味を持つ人もいるという。

寺子屋(月3回(基本))

「スキルあるママに活躍の場を」がコンセプトの教室。現在は書道と美術のお教室を開催。幼稚園生から小学生を対象にしているが、子どもたちと一緒に大人の参加も可能でご門徒の方も書道に参加している(一回500円)。

寺ヨガ(月1回(基本))

ご近所でヨガ教室を開催している講師が、穏やかな空気に包まれる「お寺」で丁寧に自分と向き合う時間を過ごしてもらいたいという思いで始めたクラス。初心者の方でも安心して参加することができる。

ボーイスカウト(月3回)

60年の歴史があるボーイスカウト板橋第2団(東京100団)。地元に定着した活動をしている。

寺院情報

寺名(ふりがな) 遥照山 慈光寺 (ようしょうざん じこうじ)
住職 田原 澄真
郵便番号 173-0032
住所 東京都板橋区大谷口上町15-1
電話番号 03-3956-6345
交通

東武東上線大山駅から徒歩約20分
池袋西口からバスで「日大病院」行きで約30分、終点から徒歩約5分

駐車場 本堂脇:10台
地図