■皆が集う「面白い」寺院をつくりたい
ここから始まる場所をつくれること。型にしたがうだけではなく、それぞれの場所でさまざまに模索しながらやっていけるのが新しい布教所の魅力ではないかと思います。今はまだ当寺院を知ってくださっている方が多くはないなか、どのように知っていただく機会を得ていこうかと考えています。
キーワードとして浮かぶのは「面白い」ということ。うちには、3人(長男・長女・次女)の子どもたちがいるのですが、彼らは興味のないことには見向きもしません。しかし一度「面白い」と思えば、強い関心を持って関わってくれる。それは実は大人も同じだと思うのです。
「面白い」の語源は、目の前が明るくなった状態をいうそうです。興味深さを感じたり、ハッとさせられたりして、ぱっと目の前が明るくなる。そんな面白いが見つかる寺院になるにはと、知恵を絞っているところです。同時に、阿弥陀如来の無量の光で私たちを包んでくださる、そういう状態が生まれたらとも考えています。
具体的には、まだまだ検討中です。ヨガや体操に集まっていただいてはどうか、子ども食堂をしたい方がいらっしゃれば、ご協力したいなどと考えたり……。これからさまざまなご縁を得て、実現していくことができたらと思います。
■誰もがともに和やかな場となるように
また、「面白い」ということを、どんな人にも垣根なく感じていただきたいという思いがあります。数年程前「コーダ あいのうた」という映画が話題になったのをご存知でしょうか。
コーダとは、聴覚障害をもった両親のもと育った子どものことを言います。実は、私もコーダとして育ちました。ある時、親戚のお葬式の場で、集まった皆さんで亡き人の思い出を語り合い、わっと笑いに包まれた時、母だけが輪に入れず、その面白さを共有できなかったということがありました。それは私にとって印象的な出来事として心に残りました。
そんなことから、私には「面白いことをできるだけ多くの人と共有したい」「その輪を広げたい」という願いがあります。最近は、坊守がしばらく休んでいた手話講習会の受講を再開したり、言語に頼らず視覚的に情報を伝えられるテクノロジーなどを取り入れることができないかなど、模索しているところです。誰もがともに和やかな場をつくれるよう、そのために協力してくださる方が自然と増えるような場になるよう、この場所を育てていきたいと思っています。