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ほうかんざん ふくぜんじ寶冠山 福善寺

「富士山に一番近い鉄道」として知られる富士急行。JR中央線大月駅から河口湖駅までの標高差約500mを登る高原列車で、豊かな自然が織りなす車窓からの風景が魅力のひとつ。福善寺があるのは、その中程に位置する三つ峠駅。駅名の由来でもある三ツ峠山は、開運山、木無山、御巣鷹山の三山からなる連山で、奈良時代には信仰の対象として、近年では岩登りのゲレンデとして知られ、時代を超えて人々を惹きつけてやまない山梨の名峰だ。その三ツ峠山の麓、南西には雄大な富士山を望む西桂町は、1000年の歴史をもつといわれる「甲州織り」や、「豊かな自然と水の町」としても知られている。

富士山の地下水を源とする豊かな水の恵みを受けるこの地で、1528年より18代に渡り、人々に親しまれてきた福善寺。境内に入ると、清らかな水の中を錦鯉が優雅に泳ぐ大きな池を有した日本庭園があり、三ツ峠山を背景に築110年の風情を醸す本堂が佇む姿は、まるで一枚の絵画のようである。

歴史

福善寺の歴史は古く、寺に残されていた文献によると、平安時代後期、1109(天仁2)年に三浦義明により建立された天台宗富士見山行満寺まで遡る。1228(安貞2)年、浄土真宗に転派、浄土真宗明見山福仙寺と寺号を改めたとされている。現在の土地に移った1528(享禄元)年に寶冠山福善寺と寺号を改称し、十一間四面の本堂を建立。ご本尊阿弥陀如来を御した。ところが、1904(明治37)年1月1日に旧本堂が類焼。今も現役の本堂は1912(大正元)年8月、取り壊される芝居小屋の部材を使って再建されたものだ。1940(昭和15)年3月に本堂落慶入仏法要が行われ、現在に至る。

第18代住職である新田了英氏が就任したのは1988(平成元)年。1998(平成10)年4月には第18代住職継職法要、庫裏落慶法要も行われた。また、110年もの長い歴史を刻んできた本堂は、2024(令和6)年に建て替えを予定している。

住職インタビュー

■歴史を受け継ぎ、次代へと繋げる

私が福善寺の第18代住職に就任したのは1989(平成元)年。前年の1988(昭和63)年に築地本願寺に奉職したばかりでしたから、突然のことでした。この地で生まれ育った私にとって、境内は格好の遊び場でしたし、いずれはこの場所を継いでいくという思いで過ごしてきたものの、21歳という若さでの着任は心配もありました。

あれから時が経ち、数年前には在職30周年の表彰をしていただきました。坊守と二人三脚で、学びながら寺を守ってまいりましたが、振り返ればあっという間でしたね。

 

私たちが大切にしてきたのは、歴史を受け継ぎつつも時代に合わせた文化をつくり、次の世代へと繋げていくことです。例えば本堂に椅子を入れることも挑戦でした。椅子を入れることで参拝者人数に限りがでますし、それまでは正座をしていただくのが慣習でしたから。しかし、時代の流れに合わせて思い切って椅子を導入してみたんです。すると、法事で初めて福善寺を訪れた方に大変喜んでいただけたんですよね。その言葉を聞き、本当に良かったと思いました。

また、坊守とともに特に力を入れてきたのは、地域の子どもたちと関わりを持つことです。現在は新型コロナウィルスの流行により実施できておりませんが、夏には境内を開放し、流しそうめんをしたり、大道芸人を呼んで芸を披露いただいたり、風船でいっぱいにした広間で遊んでもらったり、本堂で献花をしてもらうなど、寺に親しみを持っていただきたいという想いのもとで、夏祭りイベントを開催しておりました。

坊守が学習塾を運営しているのも、その一環です。幼稚園生から中学生までの生徒さんが在籍しており、開校してから13年になります。生徒さんは、門徒のお子さんもいらっしゃいますが、そうでない子もたくさんです。嬉しいのは、卒業した後も会いに来てくれること。子どもたちにとって、いつになっても集える、思い出の場所であることを誇りに思います。

 

■子どもたちの笑い声が聞こえる、親しみやすいお寺として

お彼岸やお盆にお参りして、本堂にも参拝してから、庫裏(くり※)でお茶と共にお話をして帰るというのも福善寺で古くから続く習慣です。そして私たちも先代から引き継ぎ、大切にしていることです。現在もご門徒さんの多くの方々が、お墓参りにいらっしゃいます。ですから、お盆やお彼岸の時期は大賑わい。お子さんやお孫さんと一緒に来られる方が多いので、お菓子やおもちゃも用意しています。子どもたちにとって、お寺にお参りにいくことが楽しい記憶になってもらえたらという思いがあります。
※庫裏:お寺の本堂以外の場所。居住スペースや客間などのこと。

かつて、お寺と地域の人々との間には距離がありました。でも私たちは、同じ目線で同じように過ごしていきたいと思ってきました。お寺を身近なものに感じていただくために、子どもたちにも親しんでもらえるような寺にすること。そうすることで、次の世代にもつながっていくのではないかと思っています。

後継である長男は、現在は築地本願寺に奉職しています。私たちが私たちのやり方を模索しながら寺を守ってきたように、彼なりのやり方で、歴史を守りつつ新しい時代に求められる寺に変革していってもらえたら嬉しいですね。そのためにも、私は早めに引退したいと思っているのですが、坊守にはもっともっと頑張ってと言われています。これからも地域の皆さんと子どもたちの笑顔を見続けていけたらと思います。

葬儀・法事・法要

本堂では、最大60人程度の法要が可能で、食事会ができる広間もある。他の式場や自宅での葬儀、法事・法要のほか、門徒以外や宗派の決まっていない方の相談も受け付けている。

お墓

現在は一般墓地のみ。しかし、近年の流れで合同墓地への要望も高まり、本堂建て替えに合わせて合同墓地を作る予定。

※護持会費として年間5,000円。
※詳細についてはお寺にお問い合わせください。

イベント情報

永代経法要(4月第3土曜日)

報恩講法要(11月第1土曜日)

めぐみの参拝(11月)

お子さまの成長を願う、七五三の参拝

初参式(随時)

お子さまの初めてのお寺参り

寺院情報

寺名(ふりがな) 寶冠山 福善寺 (ほうかんざん ふくぜんじ)
住職 新田 了英(にった りょうえい)
郵便番号 〒403-0022
住所 山梨県南都留郡西桂町小沼1990
電話番号 0555-25-3366
交通

【電車】
富士急行線 三つ峠駅から徒歩3分

【バス】
富士急行バス富士五湖線 中央道西桂から徒歩15分

駐車場 30台
地図