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こうしょうざん さいぞうじ光照山 最蔵寺

京急のYRP野比駅から少し歩くと、称名寺、最蔵寺、最宝寺という浄土真宗の古寺が建ち並ぶ一角がある。称名寺の門前を過ぎ、美しく整えられた植木の間の石段をのぼって立派な山門を抜けると、正面に見えるのが最蔵寺の本堂だ。
話し上手で気さくな住職・中島幸充氏は「ご縁」という言葉をよく口にする。一人でできることは少ないが、大勢の人間がつながれば大きな「ご縁」となって広がっていく。そのため住職は、依頼を受けたことはなるべく断らずに引き受けるという。元旦の法会やお彼岸やお盆、報恩講といった寺の年中行事のほかにも、小学生への町の歴史語りやフリースクールの高校生への法話など、様々な活動にも積極的だ。

歴史

貞応元(1222)年に創建した野比地区最古の寺。京の北面の武士だった藤原相模之介十晴が、天台宗の僧の徳林上人となり、各地を行脚するうち当地に最善坊という庵を建てたのがはじまり。正応元(1288)年に親鸞聖人に帰依して浄土真宗に改宗し、寺名も最蔵寺と改めた。現在の寺紋も藤の紋であり、藤原氏ゆかりの寺であることがわかる。
本堂は文明年間(1469~1486年)に建てられた茅葺の建物だったが、関東大震災で倒壊し、戦後の大改築を経て現在に至る。震災の際に火災被害がなかったため、江戸時代に造られたという本尊の阿弥陀如来は無事だったが、改築後に本堂の規模が縮小したため、須弥壇に光背ごと安置することができなくなり、現在は光背をはずした形で安置されている。
また境内には「子の社」という神社もあり、神仏習合時代の古い時代の面影も残す。

住職インタビュー

■フリースクールの子供たちとの出会い
2018年から横浜のフリースクールの高校生たちにお話をさせていただいているんですが、寺とか宗教というものは、こういった子供たちの「逃げ場」でもあると考えています。だから私は、辛いことや苦しいことがあったときは、24時間いつでもいいから駆け込んできてくださいという気持ちでいるんですよ。

■「悪いことも、ご縁である」
こうした子供たちは、不登校になって引きこもった自分は失敗者だと思い込んでいるんですね。でも「悪人正機」ではないけれど、仏様から見たら私たち全員が悪人なんだよと話してあげると、少し表情が明るくなる。マイナスでしかないと思っていたことが、そんな経験をしたからこそわかることがあるんだ、プラスになるんだと気づかされたと感想文を書いてくれた子もいました。感謝の言葉を直接聞くことができ、私もうれしかったですね。悪いことも、悪いだけじゃない。それもまた、いろんなことに気づかせてくれる「ご縁」なんです。

■辛いときに「頑張れ」とは言わない
私は、宗教は人の前に出るものではないと思っています。隣にいるんだけれど、普段は感じない。でも辛いときや困ったときに、ふっと横を見たら手を差し伸べてくれる存在。そんな風でありたいですね。そういう時に寄り添うものが、寺や僧侶であると思っている。だから私は辛いときに頑張れとは言いません。泣きたいだけ泣けばいい。だってもう十分頑張っているんですから。そういったら本当に号泣された方もいました。何にでも相手の心に響くタイミングがあるけれど、それを見極めることも大切だと思っています。

■生きていることが学び
私の祖父は、99歳で亡くなったとき「もっと生きていて欲しかった」と門徒さんたちが嘆き悲しんだほど、居るだけで有難い、安心できるという人物だったんですが、その祖父の「浄土真宗は、いまだにわからん」という言葉を心に止めています。これって、一生学ぶことをやめてはいけないという意味だと思うんですよ。よく浄土真宗は修行がないというけれど、いろんな人に出会って話を聞くこと、生きていることそのものが学びであり修行なんじゃないでしょうか。いろんな人に会って、いろんな経験をさせていただく。そのことがありがたい。私も僧侶になったおかげで、いろんな人に出会わせていただける。これは本当に有難いし楽しみでもありますね。

■小さなご縁から大きなご縁へ
実は横須賀にはフリースクールがないんですが、いま作ろうという動きが起こっていて、横浜のフリースクールの方も援助を惜しまないと言ってくれています。これも、素晴らしいご縁です。私一人ではできない事も、いろんな人のご縁をつなげれば、大きく広がっていく。そのためなら、私は自分にできることは何でもしようと思っています。

葬儀、法事・法要

「浄土真宗といっても、方言のように各土地でのやり方があり一色ではない」という住職は、それに合わせて柔軟に対応すべきだと考える。要望に応えられないときでも、出来ないと一方的に押しつけるのではなく、相手の心を考えて、受け入れてもらうように説明することを心掛けているという。
たとえば位牌を並べている方がいても、頭ごなしに駄目だとはいわない。位牌がいっぱいになってどうしようと相談を受けたとき「浄土真宗では位牌ではなく過去帳というものにするんですよ……」と説明すると、それはいいと喜んで受け入れてもらえたりする。葬儀や法要では「気持ちよく手を合わせる環境を整えることが一番だ」と考える。「時代が変わっていくように、お寺も変わっていくべきだと思いますね」

■葬儀・法要:お寺で実施 可
■施設:バリアフリーの最蔵寺会館を利用可能。本堂は椅子席。本堂内には手すりやスロープもあり。

お墓 

「お墓はご縁を結ぶ場所」だとする最蔵寺では、墓所は同じコミュニティーの場所でもあると考えられている。そのため自然と出会った人同士が声をかけあうようになり、おかげで熱中症で倒れた人を早期発見したこともあるという。
山の上にある墓所からは海が一望でき、素晴らしいロケーション。お墓は坂の上にあるため、自動販売機や休憩所が用意してあったりと、随所に気遣いがみられる。最上段には椅子とテーブルが用意され、そこで食事を取りながらお参りする人もいるという。
一般墓のほかにステンドグラスが美しい合同墓もある。またペットの墓もありペットとの合葬も要望があれば受け付ける。「ご要望には柔軟に対応しますので、希望者は気軽に相談してください」とは住職の言葉だ。

イベント情報

お彼岸、お盆、報恩講(お彼岸(3月・9月)、お盆(8月)、報恩講(11月))

講師を呼んで話を聞く。参加自由。また、お盆はかき氷とラムネとポップコーン、報恩講はおでんとポップコーンの有志による出店がでる。かき氷機は門徒の寄付による業務用なので美味しいと評判。

みのりの会(月一回・第2土曜日(1月、3月、8月、9月、11月以外))

お盆やお彼岸、初詣、クリスマスなど身近にある行事をきっかけに、仏教に限らず宗教や信仰についてフランクに話し合う会。参加自由。

寺院情報

寺名(ふりがな) 光照山 最蔵寺 (こうしょうざん さいぞうじ)
住職 中島幸充
郵便番号 239-0841
住所 神奈川県横須賀市野比1-34-1
電話番号 046-848-1413
交通

京急YRP野比駅から徒歩10分

駐車場 50台 
地図